現物から意匠図面を作成-寝具・インテリア

今回の記事のタイトルは、かなり紛らわしいものになってしまいました(^_^;)

「意匠図面」の意味としては主に2種類あります。
(1)建物の形や間取りを表す建築用語
(2)デザインを保護する事を目的として意匠登録を行なう為に作成する図面
という訳で「意匠図面」をキーワードに検索する時には、「建築」とか「特許庁」等、分野に応じて区別して検索する必要があります。

今回のタイトルに「寝具・インテリア」と付いているので、建築関連かと思われたかもしれません。弊社としては上記の(1)(2)いずれにも関わる業務を行なっていますが、今回の内容は(2)のほうです。

弊社では、寝具・インテリア売り場に置いてあるような商品。その現物をお預かりして、意匠登録用の意匠図面を作成する仕事もあります。先日作成した物品は、ふわふわしたもの。押せばへこみ、引っ張れば伸びるという、形状がしっかりと定まらないものでした。勿論図面などは無く、あるのは現物のみ。このような商品は通常、写真意匠として依頼されることが多いのですが、今回は線図のご指定でした。必要図として六面図以外に、斜視図・断面図が必要となる作業です。

まずはメジャー、ものさしを使って外形寸法を測っていきます。またカーブ形状を確認する為に写真撮影をします。その後測定した寸法を参考に、写真トレースをしながら形状を確定していきます。

現物があるなら、3Dスキャナで形状スキャンすれば簡単では?と思われるかもしれません。リバースエンジニアリングが目的なら確かにそれが一番ですね。あいにく弊社には大きな形状に対応した高精度の3Dスキャナはありません。リバースエンジニアリング用途の時には専門業者に委託することもありますが、時間とお金がかかります。(おそらく今回の商品サイズならスキャン費用10万円以上で納期10日ぐらいかと思われます。)

意匠図面の場合には、最終的に必要なものは2次元の画像データなので、わざわざ時間とお金をかけて3次元形状を求める必要は無いわけです。そんな理由で今回の場合には3Dスキャナは使用しませんでした。また弊社には撮影した写真から3D形状が作成できるソフトウエア(ウン十万円します)もあります。こちらも撮影と編集作業の手間から、今回の作業には適していません。コンピュータ任せの自動処理の方が、逆に求める品質が得られないこともあります。

物品には直線や平面が一つもない、全て自由曲面で構成された形状です。六面図と斜視図だけなら、寸法測定と写真撮影を行なった後、現物を見ながら(触りながら)職人技?を使って、CAD上で描画し完成まで持っていきます。

ところが今回の案件では斜めに切断した断面図も要求されていました。自由曲面で囲まれた窪み部分の断面形状を外観だけから想像して描くことは不可能です。絵画なら想像して描けますが、意匠図面では各図面の整合性が要求されます。断面図であっても正確に描かれていなければなりません。

いびつな形のじゃがいもを斜めに切った切り口の形状を正確に作図する事をイメージしてください。じゃがいもなら、必要な個所を包丁で切ればいいだけですが、預かっている物品をカッターで切断する訳にはいきません。

そこで、今回は3DCADを使って物品形状をまずは作成した後、断面形状を得ることにしました。3D形状を作ることによって、単に正確な断面形状が得られるばかりでは無く、六面図や斜視図の正確性をチェックすることができます。

他にも気を付けなければならないことがあります。この物品は形状が自由に変形させる事ができるものです。その商品の特徴が最もよく現れる状態の形状、いわゆる意匠登録したい形状は商品の機能上、ある程度絞られてきます。但しクライアントが理想とする形状と弊社が考える形状とは、若干異なる場合があります。

よかれと思って完成した意匠図面。その整合性は完璧に取れていても、クライアントの求めるイメージとは合わない場合もあります。現物と完全に一致した図面を完成させることが、依頼される際の要望事項ではありますが、それが意匠登録の目的ではありません。例え提供された現物とは異なったとしても、クライアントが意匠登録したいと考える形状に近づける為に敢えて修正を加えることも多々あります。

意匠図面を作成する物品の形状は、その目的からすればデザインに特徴があるものがほとんどです。機械装置部品のように単なる機能部品のようなものはほとんどありません。なので必然的に自由形状曲面を多用したものが多くなります。3D-CADで作るといっても、単に2Dスケッチして押し出せばよいという物はありません。

現物から線画の意匠図面を作成することは弊社の業務としても多く、その都度最も効率的な方法を考えながら作成しています。10件の依頼があれば、毎回実施する作成方法も10通り。日々ソフトウエアの機能も進歩しているので、1年前と同じような案件だから今回も前に行なった方法と同じ方法で、という訳にはいかず、状況に応じて作成方法を考えて行きます。こんな時、様々なツール(ハード・ソフト)、いわゆる沢山の「引出し」あると便利です。