写真から空間座標値を得る

弊社では写真から3Dデータ作成を行う業務も行っていますが、その多くは、実態を撮影した写真データから、3次元形状を再現するというものです。その為、作業の大部分は工業デザイナーがよく使用している3Dサーフェスモデラーといわれる3次元CADを使用します。その業務においてはSolidworksやInventorのような、いわゆる製造系3次元CADを用いることはありません。3次元空間上に存在する多数の点を位置を求め、その点の位置からベースとなる3次元空間曲線を作成し、それを元にサーフェス面を貼っていく方法がこれまで弊社が実施した主な手法でした。

自動的に色情報、マテリアルも含んだ3Dデータを生成するソフトウエアもありますが、それらは使用できません。弊社への依頼は業務の特性上、形状が重視されるので、特定の距離の正確さや曲面の再現性が要求されます。その為、自動処理ではできない工程が数多く存在します。

そんな仕事の中にはこんなご依頼もあります。
「トレーラーに積載されている重機の最高地点の高さを知りたい。」
提供いただいた資料は現地で撮影された数点の写真でした。恐らく高さが制約がある場所に搬入する必要があってのことだろうと思います。

日本国内の仕事で、現地に入ることができれば、現物を直接測定したり、3Dスキャナで測ったり、測量で求めることができるので、そういったサービスを行っている業者は数多く存在します。

一方、写真からデータを求める場合、何らかの理由により、写真しか情報がないということになります。
・現地に入ることができない
・間接的な依頼
など事情は様々です。そんな事情もあってか、仕事で提供される写真もほんの僅かしかありません。勿論写真の数が多ければ多いほど正確な割り出しができるのは言うまでもありません。

「スマホで写真を撮って簡単に3Dができる」等のキャッチフレーズのソフトも数多く出回っています。但しそれらは、基本的に個人的な趣味あるいはエンタテーメント用途のものでしょう。

ビジネスとして法人からご依頼をいただく業務は、地味でニッチなものです。今回は一般社団法人からのご依頼でしたがお話を聞けば、この業務を委託するにあたり、ネット上でかなり検索した結果、ようやく弊社のホームページにたどり着かれたとのことでした。その仕事は全国各地にある事業所のうち、愛知県の事業所からの依頼でしたが、学生時代、私はその兵庫県内の事業所でアルバイトしていた経験があり、懐かしさを感じました。

作業としては写真上の特徴点について、複数枚の写真を比較しながら、ソフトウエアを使って空間座標を割り出していきます。できるだけ多くの特徴点について空間座標(x、y、z)を求めたほうが精度があがります。写真は対象物の周囲360度を1周しながら、上中下、できるだけ様々な方向から撮影した写真があると正確です。実際の業務ではそのような理想的な資料が提供されることはなく、今回は4枚の写真だけでした。対象物だけではなく、地面の模様や背景に写っている建物も手がかりにしていきます。

弊社で撮影が可能な場合には、レンズの焦点距離は一定にした状態で撮影します。また、カメラ・レンズ等の撮影条件も重要な情報となります。

以上のような操作で、相対的な空間座標を求めていきます。距離の離れた特徴点の現地実測値がわかれば、各地点の絶対座標値が確定します。と言ってもそもそも現地実測ができないから、弊社にご依頼がある訳です。実測できない代わりに、トレーラーのカタログ寸法の提供があり、その値から割り出すことになりました。

お客様に納品(算出結果報告)するのは、最高地点の地面からの高さのみですが、算出の裏づけとなるデータも提出します。実際には各写真の上に特徴点のポイントを表示し、それぞれのポイントの3次元座標を一覧表にしたものを測定結果報告書として提出します。今回の業務では約50点の3次元空間座標を求めています。

写真はイメージです。実際の業務のものとは異なります。

※参考

写真から3Dを作るスマホアプリは、Autodesk 123D Catchが有名でしたが、現在は開発を終了しています。無料で利用できるので、私も使ったことがありますが、今回の記事のように正確さを必要とする業務には向いていません。但し形状や色などの情報を3次元で再現できるので、ちょっとモニター内でグリグリ回して楽しみたいという要求は満たしてくれると思います。

今後、Tinkercad Fusion 360 Autodesk ReMake などに機能を統合していくそうです。現在123Dで検索すると、 Tinkercad のWebサイトにリダイレクトされるようになっています。 Tinkercad はCAD入門用、子供向けのソフトとして広がっていくかもしれません。一度使ってみて、その使用感などはまたご紹介したいと思います。